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2023.04.16

たかが便秘されど便秘 本当はこわい便秘症について

髙橋 聡

髙橋 聡

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おおいまち消化器外科クリニックの院長 高橋です。

 

皆さんは便秘と聞いてどんなイメージをお持ちですか?

たかが便秘、と感じている方が多いと思いますが、

実は、健康や生活に大きな影響を与える可能性のある疾患なのです。

 

今回は、特に欧米を中心とした報告をもとに便秘症についてご説明したいと思います。

労働生産性の低下

米国のアンケート調査では

「欠勤による損失時間」

「就業中に仕事が妨げられた時間」

「労働時間の損失率」

「日常活動性の阻害率」

これら全ての項目で、便秘の患者さんは悪化が見られました。

便秘症が仕事に悪影響をおよぼしているというデータです。

 

生命予後との関係

米国の報告では、便秘症は生命予後(余命)に関与するとされています。

興味深いことに、その他の胃腸系の機能疾患である

過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、慢性下痢症、腹痛症は

余命と関係ないと報告されています。

 

日本の報告では、便秘症は心臓病、血管系疾患による死亡と関係するとされています。

便秘症の方が有意に危険性が高いのです。

 

同様のデータは米国でもみられており

閉経後の便秘症女性に、心臓、血管系疾患が多くみられると報告されています。

 

便秘症が心臓や血管の疾患による予後を悪化させる原因は

「腸内細菌叢の違いが動脈硬化に関わる」

「酸化ストレスが便秘症、心臓病、血管系疾患に共通している」

「便秘による腹圧の上昇に伴う呼吸法の変化が循環動態に影響を及ぼす」

など、様々な説が想定されています。

 

デンマークの報告では、便秘症の方がパーキンソン病に罹患するリスクが高まることが報告されています。

 

また、睡眠障害や鬱症状、性的機能の低下に関与しているとのデータも報告されています。

 

便秘症は、一般的に生活の質に関わる良性疾患と理解されていますが

生命予後に関わる重大な疾患への関与についても注意する必要がありそうです。

 

まとめ

このように便秘症はQOLや社会的労働生産性の低下を認めるだけでなく

生命予後に関係する重篤な病気に関与する可能性があります。

 

便秘症がみられる場合は、大腸カメラなどの検査で原因をしっかり確認し

大腸がん大腸ポリープが関わっていないことを十分に確認した上で

個々の症状や病態に合わせた治療を行う必要があります。

 

たかが便秘、されど便秘ですね。