2025.03.20
便秘症の治療薬について その1 酸化マグネシウムってどういう薬?

髙橋 聡
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おおいまち消化器外科クリニック 院長の高橋です。
今回は、最も一般的な便秘症治療薬の一つである酸化マグネシウムについてご説明します。
酸化マグネシウムは、最近ではテレビCMで見かけたり、ドラッグストアでも様々な名称で販売されているのでご存知の方も多いと思います。
Contents
酸化マグネシウムの作用機序について
便を軟らかくする薬です
酸化マグネシウムは、内服後胃内において胃酸と反応して塩化マグネシウムとなります。
その後、さらに十二指腸で重炭酸マグネシウムや炭酸マグネシウムに変化します。
これらの物質が腸管内の浸透圧を上げることで、水分を引き寄せ、便を軟らかくします。
なぜ便秘改善につながるのでしょうか
では、便が軟らかくなることで便秘が改善するのはなぜなのでしょうか?
硬い便と比較して軟らかい便は腸管の通過時間が短くなります。
そのため、便は素早く腸の中を通過して直腸まで移動するのです。
続いて、肛門まで届いた便に対して便意を感じないと排便は起こらないのですが
硬い便に比べて軟便は便意を感じやすいことが知られています。
どんなに普段便秘の方でも、お腹を壊して下痢になると
排便を我慢できない様な強い便意を感じることはイメージしやすいと思います。
これらの効果により、酸化マグネシウムは腸や肛門を刺激することなく、
ご自身の腸管や肛門に備わった本来の機能を利用して排便を促すタイプの薬です。
そのため、一般的な下剤と異なり、刺激になれることもなく、習慣性もないことが知られています。
どんなことに注意して飲むといいの?
腎機能が低下している方は注意が必要です
長年の使用実績から、酸化マグネシウムは安全性の高い薬剤として知られています。
副作用も比較的少なく、多くの患者さんに安心して処方できる薬剤ですが
高齢の方や、検診などで腎機能低下が指摘されている方注意が必要です。
腎臓の機能が弱っている場合、血中高マグネシウム血症をきたすことがあることが知られています。
必要最小限の内服量の設定や、定期的な血液検査が必要です。
また、他の非刺激性下剤をご提案することもできますのでご相談ください。
内服するタイミングについて
一般的に下剤、と聞くと寝る前に内服するイメージを持っている方が多いと思います。
刺激性下剤の場合は内服後6から8時間ほどで効果が出ますので下剤は寝る前、というケースが多いのです。
酸化マグネシウムは胃酸と反応して、浸透圧を利用して腸の中に水分を引き込む効果ですので
食べ物を摂取した後で内服することによって、食事内容に有効に水分を含ませることができます。
理想的には毎食後に内服することで、満遍なく柔らかな便を作ることができると考えられます。
おまけの効果
まとめ
酸化マグネシウムは、その優れた便秘改善効果と安全性から、多くの患者さんに適した薬剤といえます。
特に、慢性便秘症の方には効果的な選択肢の一つとなるでしょう。
ただし、高齢者や腎機能障害のある方では、血中マグネシウム濃度のモニタリングが必要です。
また、個々の患者さんの状態に応じて、適切な用量調整を行うことが重要です。
便秘症は多くの方が悩むよくある病気ですが、生活の質を大きく低下させる疾患の代表でもあります。
大腸がんなど重篤な病気の初発症状の場合もありますので突然の便秘症や便の鮮血反応などでご心配な場合は
放置せず、おおいまち消化器外科クリニックまで一度ご相談ください。
大腸内視鏡検査など、検査が必要な場合にはつらくない内視鏡検査や大腸ポリープ切除を安全に行っています。